2024.10.22
防湿袋とは?防湿の方法・様々な防湿手法
防湿袋とは?防湿の方法・様々な防湿手法

防湿袋とは?
防湿袋は、電子部品、精密機器、食品など、湿気に弱い製品を湿気から守り、品質を保つために使用される袋のことです。
防湿性能は主に「水蒸気透過度」といった言葉で計られることが一般的です。
2層以上のラミネート構造で構成されている袋が広く普及しています。
なぜ防湿性能が必要なのでしょう?
防湿袋の役割について
- 湿気からの保護
工業用防湿袋の主な目的は、製品を湿気から守ることです。湿気は多くの工業製品にとって深刻な問題を引き起こす可能性があります。
- 酸化防止
湿気は金属部品の酸化や腐食を引き起こす主な要因です。防湿袋を使用することで、これらの問題を防ぎ、製品の寿命を延ばすことができます。
- 性能維持
精密機器や電子部品は湿気に非常に敏感です。防湿袋を使用することで、これらの製品の性能低下を防ぎ、品質を維持することができます。
- 静電気からの保護
多くの工業用防湿袋は、静電気シールド機能も備えています。
静電気対策: 静電気は電子部品に深刻なダメージを与える可能性があります。防湿袋の静電気シールド機能により、製品を静電気から保護し、安全に保管・輸送することができます。
- 長期保存と輸送
- 長期保管
高い防湿性能により、倉庫や工場など湿度が高い環境でも製品を長期間安全に保管することができます。
- 輸送時の保護
防湿袋は製品を外部環境から守り、輸送中の品質劣化を防ぎます。
補足内容
水蒸気透過度?酸素透過度とは?
たとえばビニールはプラスチックフィルムの一種とも言えますが、これらは水分や水蒸気、酸素や二酸化炭素、窒素やガスを一定量透過します。
日常的に使っている分には、水漏れといった現象は気にならないかもしれませんが、袋を閉めているにもかかわらず「におい」が出てきてしまうといった経験はないでしょうか?
また、水を通さないはずなのに湿気を通してしまう状況になったことはないでしょうか?
これは、袋を密閉していても、一定量の分子が袋を通過することで発生する現象です。
ポリ袋は水蒸気やガスを透過させる
プラスチックフィルムの持つ透過性は素材の種類によって異なり、バリア性能の高いものもありますが、100%遮断することはできません。
ポリエチレンには、以下の2つのタイプがあります:
- 高密度ポリエチレン(HDPE)
- 低密度ポリエチレン(LDPE)
ナイロンなどの素材も使われ、空気や水蒸気の透過率が異なります。
スーパーや量販店で目にする袋には、主にLDPEかHDPEが使用されています。
水蒸気が透過する理由
水は水分子であり、分子が通過することで水蒸気が透過します。
フィルムの表面に吸着した湿気は水分子としてフィルム内に溶け込み、反対側の表面に蒸散します。
蒸散は高湿度から低湿度の方向に進むため、袋の内部が外よりも低湿度であれば、外の湿気が内部に流れ込むことを防ぐことができます。
水蒸気透過度の低い素材を使用することで、このような透過を抑えることが可能です。
主な防湿袋の種類
- アルミ防湿袋
- アルミ蒸着袋
- アルミナ蒸着袋
- シリカ蒸着袋
- 静電気対策防湿袋
各防湿袋の特徴とメリット・デメリット
アルミ箔防湿袋
アルミ箔防湿袋とは
その高い防湿性と遮光性、バリア性が特徴です。

特徴
- 高い防湿性:水蒸気をほとんど通さず、湿気による製品の劣化を防ぐ。
- 遮光性:光を遮断し、光に弱い製品の変色や劣化を防ぐ。
- バリア性:酸素やその他のガスの透過を防ぎ、酸化や変質を防止。
- 耐熱性:ある程度の耐熱性があり、高温環境下でも変形しにくい。
- 遮音性:外部からの衝撃や振動から製品を保護する。
メリット
- 製品の品質保持:湿気、光、酸化から製品を保護し、品質を長期間維持。
- 幅広い用途:電子部品、精密機器、食品、薬品の保管に利用。
- 安全性:食品や薬品の漏出防止に役立つ。
デメリット
- 価格:プラスチック袋より高価な場合がある。
- 熱に弱い:高温になると変形の可能性がある。
- 傷に弱い:鋭利なもので傷つくと防湿効果が低下する。
- 柔軟性の欠如:アルミ箔単体では取り扱いが難しい場合がある。
- リサイクルの難しさ:プラスチック袋に比べてリサイクルが難しい。
アルミ蒸着袋
アルミ蒸着袋とは
プラスチックフィルムにアルミニウムを真空蒸着して製造され、薄いアルミ層が形成されます。

特徴
- 薄いアルミ層による優れたバリア性。
- 軽量で柔軟性がある。
- 一定の透過性を持つ。
メリット
- 優れたバリア性能:酸素、水蒸気、光、匂いから内容物を保護。
- 軽量で高強度:物流コストの削減や取り扱いの容易さにつながる。
- 環境負荷の低減:使用素材が少なく資源の節約になる。
- コスト効率が良い:効率的な製造プロセスでコスト削減が可能。
- 食品の鮮度保持に適している。
デメリット
- 耐熱性の限界:アルミ箔に比べて耐熱性が低い。
- バリア性能の限界:アルミ箔と比べるとやや劣る。
- 用途の制限:高温での使用や完全な遮断が必要な場合には適さない。
アルミナ蒸着袋
アルミナ蒸着袋とは
フィルムの表面にアルミナ(酸化アルミニウム)を非常に薄い膜として蒸着させた袋です。
特徴
- 高い透明性:中身が見えるため、商品のアピールに繋がります。
- 高い硬度:表面が硬く、傷つきにくく製品を保護します。
- 耐熱性:高温でも変形しにくく、熱に弱い製品の包装に適しています。
- 耐薬品性:酸やアルカリに強く、腐食しにくい特性を持ちます。
- バリア性:ガスや水蒸気の透過を防ぎ、内容物の酸化や変質を防ぎます。
- 電気絶縁性:電子部品の包装に適しています。
メリット
- 鮮度保持:酸化や風味の劣化を防ぎます。
- 品質保持:湿気や光から製品を守ります。
- 透明性:中身を見せることで商品の魅力を高めます。
- 耐熱性:高温での殺菌処理に適しています。
- 耐薬品性:医薬品や化学製品の包装に適しています。
デメリット
- コスト:一般的なプラスチックフィルムより高価です。
- 印刷適性:印刷には特別なインクや方法が必要な場合があります。
- 柔軟性:アルミ蒸着袋に比べて柔軟性に欠けることがあります。
シリカ蒸着袋
シリカ蒸着袋とは
プラスチックフィルムに酸化ケイ素(シリカ)を真空蒸着して製造される袋です。

特徴
- 透明性:中身が確認できます。
- バリア性能:優れたバリア性を持ちます。
- 電子レンジ使用可能。
- レトルト処理対応。
メリット
- 多様な用途:食品や医薬品の包装に適しています。
- 安定したバリア性能:温度依存性が低く、加熱時も性能を維持します。
デメリット
- バリア性能の制限:アルミ箔に比べるとやや劣ります。
- 強度の制限:アルミ蒸着袋に比べて強度が低い可能性があります。
- コスト:製造プロセスが複雑でコストが高くなります。
静電気対策防湿袋
静電気対策防湿袋とは
静電気の発生を抑えつつ、湿気から内容物を保護する機能を持った袋です。
特徴
- 静電気の発生と蓄積を防止。
- 高い防湿性能を持つ。
- 多層構造のフィルムで構成。
メリット
- 静電気からの保護:電子部品や精密機器をESDから守ります。
- 湿気からの保護:湿気に敏感な製品を保護します。
- 安全な輸送と保管が可能。
デメリット
- コスト:一般的な包装材料に比べて高価です。
- 再利用の制限:真空引き使用により再利用が難しい場合があります。
補足情報
多層ラミネート防湿袋とは
防湿性能やガスバリア性能、静電気対策機能を付与するために、様々なフィルムを1枚にラミネートした袋です。
特徴
- 高い防湿性:複数のフィルムを組み合わせ、水蒸気を効果的に遮断します。
- バリア性:酸素、二酸化炭素、臭気などに対して高いバリア性を発揮します。
- 耐油性:油分を通しにくく、油脂を含む製品の包装に適しています。
- 耐熱性:高温環境下でも変形しにくいものがあります。
- 遮光性:アルミ箔を含む場合、遮光性が高くなり、光に弱い製品の保護に役立ちます。
メリット
- 高い性能:防湿性、バリア性、耐熱性など様々な性能を組み合わせ可能。
- 幅広い用途:食品、医薬品、電子部品など様々な分野で利用されます。
- 長期保存に適している。
- カスタマイズ可能:必要な性能に応じて、フィルムの種類や層数を調整できます。
デメリット
- 価格:一般的なプラスチック袋より高価な場合があります。
- リサイクルの難しさ:複数のフィルムを組み合わせているため、リサイクルが難しい場合があります。
- 柔軟性の欠如:フィルムの種類によっては、柔軟性に欠ける場合があります。
4.工業用防湿袋と防湿方法:様々な手法とその効果
工業製品の品質を維持し、寿命を延ばすためには、適切な防湿対策が不可欠です。特に電子部品や精密機器、金属部品など、湿気に弱い製品には高度な防湿技術が求められます。
工業用防湿袋の役割と特徴
- 材料:ポリエチレン、ナイロン、アルミ蒸着フィルムなど高い気密性と耐水性を持つ材料が使用されます。
- 構造:複数層のフィルムや乾燥剤を内蔵することで高い防湿効果を実現します。
- 種類:製品の種類や大きさ、必要な防湿レベルに応じて様々な形状やサイズが用意されています。
工業用防湿袋を用いた防湿方法
- 乾燥剤との併用:
- シリカゲル:吸湿性が高く、幅広い温度範囲で安定した吸湿性能を発揮します。
- 酸化カルシウム:吸湿力が強く、大気中の水分を効率的に吸収します。
- 分子ふるい:特定の分子サイズの水分子のみを吸着し、選択的な乾燥が可能です。
- 真空パック:袋内の空気を抜き、真空状態にすることで、酸素や水分による劣化を防ぎます。
- 窒素充填:袋内に窒素ガスを充填し、酸化を防止します。酸化に弱い製品に適しています。
- 多層構造:異なる素材のフィルムを重ねることで気密性、遮光性、耐熱性を向上させます。
防湿袋の防湿手法
バリア性フィルムの使用
原理:
高いバリア性を持つフィルム(アルミ箔、ナイロンなど)を袋の素材として使用することで、水蒸気の透過を防ぎます。
特徴
- 高い防湿性:水蒸気だけでなく、酸素やその他のガスも遮断できます。
- 多様な組み合わせ:フィルムの種類や層数を組み合わせることで、様々なレベルの防湿性能を実現できます。
- 耐熱性・耐寒性:使用するフィルムの種類に応じて調整可能です。
蒸着
蒸着の基礎知識
蒸着は、光の反射防止や撥水性の向上など、機能を保護するために物質の表面に薄膜をコーティングする技術です。
- アルミ蒸着:真空状態でアルミニウムを蒸発させ、プラスチックフィルムの表面に付着させます。
- アルミナ蒸着:アルミナ(酸化アルミニウム)を蒸発させ、膜を形成するプロセスです。
- シリカ蒸着:酸化ケイ素を蒸着し、透明性の高いフィルムを形成します。
乾燥剤の封入
原理:
シリカゲルや酸化カルシウムなどの乾燥剤を袋内に封入し、空気中の水分を吸収します。
特徴
- 手軽さ:袋に乾燥剤を入れるだけで防湿効果が得られます。
- 再生可能:加熱することで乾燥剤を再利用することが可能です。
- 吸湿能力の限界:湿度が高い環境では吸湿能力が低下する可能性があります。
脱酸素剤の封入
原理:
脱酸素剤が酸素を吸収することで、袋内の酸素濃度を低下させ、酸化を防ぎます。
特徴
- 酸化防止:食品の変色や風味の劣化を防ぎます。
- カビ防止:食品におけるカビの発生を抑制します。
- 脱酸素速度:早いものやゆっくり作用するものがあり、用途に応じて選択可能です。
補足情報:蒸着とスパッタリングの違い
蒸着とスパッタリングの違い


- 原理:蒸着は真空中で物質を加熱・蒸発させ、基板上に付着させます。一方、スパッタリングはイオンをターゲットに衝突させ、粒子を基板上に堆積させます。
- 成膜速度:蒸着の方がスパッタリングよりも速い。
- 膜の付着力:スパッタリングの方が強い付着力を持ちます。
- 対応材料:蒸着は低融点材料、スパッタリングは高融点材料や合金にも対応します。
- コスト:蒸着装置の方がシンプルで安価、スパッタリングは複雑で高価。
- 大面積対応:スパッタリングの方が均一な膜を形成しやすい。